利己的な遺伝子 40周年記念版
リチャード・ドーキンス
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kokiさんのノート
1. 生物は遺伝子のための機械でしかない
人間含め全ての生物は遺伝子を複製するための機械である。  今残っている遺伝子は何百万年もの激しい競争世界で生き抜いてきており、共通する大きな特徴として「非情な利己主義」であることがこの本の主張である。一般的に種の利益のために進化してきたように考えられがちだが、これは誤解であると主張している。簡単に言うと、仲間と一緒に生き延びようとするのではなく、自分の遺伝子がいかに生き残れるかということだけを考えている(ように振る舞っている)ということだ。 遺伝子はそれ単体では外部の環境変化に対応できず生き残れないため、外界の変化に対して素早く対応する必要がある。動物であれば目や耳といったセンサーで外部の情報をキャッチし、脳で危険かどうかを判定し、筋肉を動かして生き延びるための行動をとっている。これは遺伝子が直接体を操作しているのではなく、生き延びる行動をとる体になるように遺伝子がプログラムしている。遺伝子というパイロットにとって、生物の体は都合の良い動きをするようにプログラムされたロボットのような関係なので、「生存機械」と呼んでいる。
2. 興味深い具体例
生存機械は自分の遺伝子を残すことだけに興味があるという主張では説明が難しい事例もある。例えばハチやアリに代表される膜翅目(まくしもく)の動物は自分が生殖行為をしないだけではなく、集団のために必死に食糧を集めたり、時には命と引き換えに巣を守ったりすることもある。一見すると巣の中で女王だけが利益を手にし、働き蜂(ワーカー)にとって何の利益があるのかという疑問が浮かんでくる。 しかしワーカーのここでの行動も実は自分の遺伝子を残すための行動であると説明できる。 巣にいる女王が産卵するとき、未受精卵はオスに受精卵はメスになる。つまりオスには父親がいないことになる。  関係をわかりやすくするために、登場人物(人ではないが…)を父、母(女王)、息子、娘A、娘Bとしておこう。前提から順に説明すると 【前提】 ・息子は母親の二組の遺伝子のうち一組だけを持っている ・娘は母由来の一組の遺伝子と父由来の一組の遺伝子を持っている。 ・父は一組しか遺伝子を持たないので、父が作る精子は全て同じものになる 【遺伝子の近さ】 ・母の視点では息子にも娘にも半々の遺伝子を受け継がせている(子どもの遺伝子はの半分は自分の遺伝子) ・娘Aが持つ遺伝子が母親由来だとすると娘Bが同じ遺伝子を持つ確率は50%になる ・娘Aが持つ遺伝子が父親由来だとすると娘Bが同じ遺伝子を持つ確率は100%になる 【結論】 ・つまり娘Aから見ると、母親よりも娘Bの方が多くの遺伝子を共有していることになる(父親からの遺伝子は100%同じで母親からの遺伝子は50%の確率で同じ) 要するに娘からすると自分の子どもを残すよりも女王に姉妹を産ませて育てた方が自分の遺伝子をより多く残せることになるため、ワーカーとして振る舞うわけである。
3. 文化の遺伝
言語に代表されるが、他にも衣服や食べ物、建築、工芸などの文化は歴史を通じて遺伝的進化のような進化を遂げている。  この本の中では文化的な自己複製子を「ミーム」と名付けている。遺伝子が精子や卵子を経由して体から体へと飛び回るように、ミームは文字や言葉を通じて脳から脳へと渡り歩く。例えば科学者が良い考えを聞いたり読んだりすると、同僚に話したり論文や講義で発信したりする。そうして広まっていく中で評価を得たものだけが選択されていく様子は、遺伝子が自然淘汰されていく様子に確かに似ている。